松尾神社

松尾神社は宮地に鎮座する古社であって、創立および沿革については明瞭を欠くが、甲斐国誌に「社記云延喜式所載山梨郡松尾神社是也云々」とあって、由緒正しい神社である。本殿は一間社入母屋造り、一間向拝に軒唐破風を付け、屋根は檜皮葺(現在銅板葺)である。この建築に見られる特徴は、身舎と向拝に用いられている蟇股の意匠である。蟇股は斗きょうと斗きょうの間に中備として入れられ、桁を受ける支持材であり、蛙の脚のような形をしているので蟇股と呼ばれた。本来は構造的な意味を持って使われたが、次第に装飾的な趣きを現すようになった。本殿に使用された蟇股をみると、正面が「松」、西側面が「波と亀」、北側面が「竹」、背面が「波と鶴」の図案を絵画的に刻んでいる。本殿の建築年代については蟇股に施された意匠や木鼻の手法、比較的複雑な斗きょうの特色等をみると、おそらく桃山時代の頃の遺構と思われる。